このまま

こころのままに

母へのジレンマ

「萌ちゃんお休みなさい。明日も早いんだから、早くお布団に入っちゃいなさい。」

夕食の洗い物をしながらそう言う母は明日、私よりも30分早く家を出る。私と弟の朝食を用意してから。

 

「お弁当作らなくてごめんね。お母さん不器用だから、お弁当見られたら恥ずかしいでしょう。これ、千円。」

学校がある日は毎日お昼代をくれる。母はお昼を食べない。

 

高校生の私は千円あればお昼を満足に食べられる。半分でいいから、残りは母が使ってほしい。そう何度言っても断られる。

 

でも実際、千円のお昼代は決して多い訳ではない。

思春期は無限に食べられる上に、街中にはスタバに31  学内にコンビニ、誘惑はゴマンとある。

少しの気の緩みが原因で、いつも残金は殆ど無い。

 

母は自分のことを【自発的に考え仕事をすることがトコトン出来ない人種】と考えているそうだ。仕事は派遣された工事現場で、人の指示のもと働いている。

 

母は今年60歳で、体力勝負の仕事が適任だとは思えない。何より娘として、体の無理をして欲しくない。細い母の体を傷つけるほど重い荷物を持ち、家族の為お金を稼いでいるんだろうと想像して、泣きたくなる。

 

何故母が頑なに事務や総合職で働けないと思うのか、私には理解が出来ず何度か聞いてみたことがある。

するといつも悲しい顔をして、謝る母。

過去何度も働いて、職場の方へ迷惑をかけたと言う。

 

問い詰めると、責められているように眉間をシワを痩せる母に胸が締め付けられた。もうこの先、これ以上仕事について伺うことはない。

 

人に尽くしてばかりな優しい母。大好きな母。に甘えて、何も出来ないダメな私。

 

弟に話すと、呆れられた。

ほんと、親子だね って。